中国における著作権登録制度
中国において、実は、著作権の重要性は比較的に高く、あまり、知られていないかもしれませんが、中国知財権侵害訴訟件数の中で最も多いのは著作権関連の訴訟だったり、著作権を冒認登録されることにより正規ビジネスに影響が発生する事例が多発したり、コンテンツ関連の海賊版対策するに当たって著作権登録はほぼ必須であったり等、予め、著作権登録をしておかないと、様々な場面において、問題が生じることも少なくありません。今回のトピックでは、中国における著作権登録の制度・手続・活動場面などを紹介したいと思います。
中国著作権登録の法的根拠・管轄
中国は「ベルヌ条約」と「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS)の加盟国であり、著作物が完成した時点で、自動的に著作権が発生することになりますが、その立証をより容易にできるため、中国では、著作権の登録制度も導入されています。具体的には、中華人民共和国国家版権局の「国権(1994)78号:作品自主登録試行弁法」で規定されているように、中国での著作権関連業務は国務院、および、中国国家版権局関連機構で扱われていて、著作権登録業務については、中国国家版権局の下部組織である「中国著作権保護センター」、及び、各省・市・自治区の版権局で対応している現状であります。このうち、省・市・自治区の版権局は主に中国国内向けであり、外国向けは「中国著作権保護センター」で著作権登録を行うとなります。
図 中国著作権保護センターのホームページ
URL:http://www.ccopyright.com.cn/
著作権登録の活用場面
■権利行使
冒頭でも紹介しました様に、中国知的財産権関連の民事訴訟の内、著作権にかかる訴訟が最も多い状況であり、民事訴訟において、著作権登録証書は権利保有・帰属の証拠として利用できることが、中国の司法解釈[1]で明記されています。そのため、こうした数多くの著作権紛争民事訴訟において、著作権登録は、当事者の立証負担の軽減に役立っています。
図 中国知的財産権民事一審事件統計(2019年)
また、海賊版対策において、例えば、警告状送付、行政摘発、刑事摘発、リンク削除など、実際の被害状況に応じて、こうした手段を活用して権利行使していきますが、実務では、著作権登録証書の提出は原則必要とされており、著作権登録証書を所持していない場合、摘発担当当局やECサイト側は、摘発やリンク削除を実施しないのが実情であります。
■冒認対策
標識に著作物(例えば、キャラクター図形やロゴなど)を含む冒認商標出願が発生した際に、著作権登録証書を持って、先行著作権の侵害を理由に、冒認商標に対する異議申立や無効審判を請求すれば、冒認商標の登録阻止や無効化を効率よく実現することが可能であり、例として、以下2つの公開事例をご紹介したいと思います。
案例A・キャラクター図形冒認の異議事例
青島凯利融通服飾有限公司は第28327553号「図形」商標を出願しました。それに対し、株式会社フレーベル馆は異議申立を提出し、先行著作権侵害を主張しました。そして、著作権登録証書を含む先行著作権の証拠を官庁に提出しました。
中国国家知識産権局は審理を経て、「(2020)商标異字第0000013591号商標出願却下決定書」において、「異議人は、被異議商標がその先行著作権を侵害すると主張し、そして、アンパンマン図形の中国の美術作品登録証書(登録番号:国作登字-2018-F-00421004、国作登字-2018-F-00421005)及びかかる図形の関連宣伝、販売の証拠を提出した。…上記証拠は、異議人の先行著作権を証明でき、被異議商標はその独創性を有する作品への剽窃・模倣に該当し、異議人の先行登録権を侵害する…被異議商標の登録出願を却下する」と述べています。
案例B・製品パッケージ図形冒認の異議事例
張創禄は第28881354号「図形」商標を出願しました。それに対し、大正製薬株式会社は異議申立を提出し、先行著作権侵害を主張しました。そして、著作権登録証書を含む先行著作権の証拠を官庁に提出しました。
中国国家知識産権局は審理を経て、「(2020)商标異字第0000018325号商標出願却下決定書」において、「異議人は、被異議商標がその先行著作権を侵害すると主張し、そして、RIUPのパッケージ図の中国の美術作品登録証書(国作登字-2019-F-00700072号)及び日本登録情報、関連公証情報などの証拠を提出した。…上記証拠は、異議人の先行著作権を証明でき、被異議商標は異議人を有する図形と比べ、デザインスタイル、主な要素、視覚効果においてほぼ同じであり、単なる偶然とは言い難く、その登録出願は異議人の独創性を有する作品に対する剽窃・模倣に該当し、異議人の先行登録権を侵害する行為に該当する…被異議商標の登録出願を却下する」と述べています。
中国の知的財産権実践に基づき、実際において、このような図形への商標異議案件に対し、著作権者が先行著作権を有する関連証拠を提出し、先行著作権の立証が必要です。証拠が比較的に全面的な場合、中国の官庁がそれを認めて他人の冒認商標の出願を却下する可能性も自然に高くなります。また、上記提出された先行著作権を立証する証拠のうち、一般できに考えられる関連公開発表・宣伝などの証拠のほか、「著作権登録証書」も証拠として使用されています。また、上記国家知識産権局の商標異議/無効審判決定書を読むと、「著作権登録証書」はそれらの決定書にも取り上げ、その登録番号全称を記入するなど、著作権立証のやや重要なキーポイントとして捉えられる傾向が見られています。特に、もし著作権登録証書の発行日が冒認商標出願日より前の場合、さらに有利な証拠となります。中国がますます冒認商標を厳しく取り締まる姿勢を取っている現在、上記の2020年最新の異議決定を踏まえ、先行著作権への保護レベルは従来より上げられている傾向を否定できません。このような傾向の中、著作権登録証書は商標案件ひいては知的財産権案件全般での役割も大きくなり、その活用は今後も期待されているとも言いましょう。よって、もし中国にて著作権物に対する権利侵害にご心配がありましたら、ぜひ早ければ早いほど、著作権登録を済ませたほうがよいと考えます。
著作権登録の手続
中国で著作権登録する際、原則として、方式審査のみが行われるため、申請から登録完了まで、大体3ヶ月ほどの時間しか必要とされない状況であります。この点、特急料金を支払うことによって、登録までの所要期間は、最短で1〜2週間程度に短縮することも実は可能であります。
図 申請から登録までの流れ
図 著作権登録書のサンプル
以上、結論として、著作権を登録すること自体、著作権発生の要件ではありませんが、著作権者が権利行使を行う際に、著作権登録が予め行われていると、当該権利の存在・帰属を初歩的に証明されやすく、権利行使がスムーズにできる場合も少なくないため、弊方では、普段から、著作権登録を積極的に推奨しています。
著者情報
IP FORWARD法律特許事務所
中国商標代理人