コラム

NFTマーケットプレイスにおける無許諾出品(海賊版)の削除

はじめに


 2022年のNFT取引総額は5月時点で5兆円に迫る勢いであったと報じられている。その一方で、知名度が高い日本のアニメキャラクター等の画像を利用したNFTの流通も増大している。この多くは、対象IP著作権者等による正規IPライセンスを受けていないで作成・流通している海賊版NFTである事例も確認され、こうした海賊版NFTの流通はIPを利用したNFT全体の8割を占めると言われている。その他にも、正当なIPホルダを装った詐欺的NFT、有名芸能人の肖像を無断で利用したNFT等の被害も増えてきている。こうした海賊版NFT作成者が利益を得ていて、正当なIPホルダに対して還元されるべき利益がほぼ還元されないまま市場が拡大しているのが現状である。今回は、こうした被害を前提に、NFTマーケットプレイスに対する一般的な削除申請について解説する。


NFTマーケットプレイスについて


 NFT(Non Fungible Token;非代替性トークンの略称)とは、 「偽造・改ざん不能のデジタルデータ」であり、ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一性を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能を持つ。[1] そして、NFTマーケットプレイスの種類について、利用するブロックチェーンによって大別される。更にパブリックチェーンを用いるマーケットプレイスは、クリエイター出品の制限によって、「オープンマーケットプレイス」と「審査制、招待制マーケットプレイス」に分類される。


図1 NFTマーケットプレイスの分類


[1] 経済産業省「デジタル時代の規制・制度のあり方について」第4回産業構造審議会経済産業政策新機軸部会事務局説明資料


人気なNFTマーケットプレイス例


 現時点で、世界で最も知名度と取引量が高いNFTマーケットプレイスといえば「Open Sea」が有名であるが、これ以外にも多数存在しており、本記事では、以下のとおり、最近注目されているオープン型マーケットプレイスの幾つかを紹介する。


図2 人気マーケットプレイスの一例



「Open Sea」の特徴

・世界最大の取引量を誇るプラットフォームであり、NFTの市場をけん引している。
・取り扱うNFTはデジタルアートやゲームアセットなど多種多様であり、ユーザーはウォレットを接続するだけで、それらのNFTの作成や売買が可能。
・複数のブロックチェーンに対応しており、「Ethereum」、「Klaytn」、「Polygon」、「Solana」ベースのNFTに対応している。


「LooksRare」の特徴

・2022年1月にサービスを開始したNFTマーケットプレイスである。
・「LOOKS」というプラットフォーム内で利用できる独自トークンを発行している。


「Crypto Punks」の特徴

・NFTプロジェクトを手がける企業「Larva Labs社」が発行するデジタルアートNFT「CryptoPunks」(クリプトパンクス)の専用マーケットプレイスである。
・2020年から2021年にかけて巻き起こったNFTのブームにおいて、火付け役となったコレクションの1つで、現在も高い人気を誇っており、中には数億円~数十億円の高値で取引されるものもある。


無許諾出品(海賊版)の被害例


 日本の人気コンテンツIPの一部を選定して、主要マーケットプレイスにおいて無許諾NFTについて調査したところ、多数の侵害疑義NFTと思われる事例が確認された。


 ※なお、図3は、本記事のために収集した参考情報であり、権利侵害の該当性について法的な分析や権利者への確認は行なっていないことご注意ください。


図3 人侵害疑義NFTと思われる事例の一例



   出所:OpenSea出品事例より抜粋(調査時期・2023年3月)


 NFTコンテンツ自体はあくまでデジタルデータであって、それが正規版であるかは外見上わからず、許諾のあるNFT(正規NFT)と無許諾NFTはデータ上で区別することが難しい。ただ、出品者や販売状況を細かく確認することにより、仮にそのNFTが無許諾であることが確認できれば、相応な対策を取ることも可能である。IPホルダが無許諾NFTの問題に対処するためには、主にマーケットプレイスに対する削除申請が考えられる。例えば、「Open Sea」では、法律違反や知財侵害に当てはまるNFTに関して、それを取り下げるための受付窓口が存在しており、その窓口に対して削除要請を提出すれば、審査の結果によっては、該当NFTがマーケットプレイスから削除できるようにはなっている。但し、NFTの元となるデータ自体はブロックチェーンに残存していることから、削除されたNFTが再び出品されるおそれもあり、再犯リスクは依然として残る。


図4「OpenSea」削除申請の受付窓口の様子



まとめ

 

 近年、海外における、日本の漫画、アニメ等IPの人気が高まっていく中、本IP権利者の許諾なく活用した無許諾NFTが増えていくリスクがある。そのため、マーケットプレイス等における流通情報を定期的に監視し、それを踏まえた対策検討が今後求められるのではないかと思われる。


 我々IP FORWARDは、長年にわたり、日本の海賊版や模倣品対策業務に従事し、調査専用ソフトウェアを開発して保護サービスを提供させていただいている中、この度、NFT業界におけるIP保護の仕組みを開発、提供を開始致しました。今後、同サービスの強化を加速させ、一日でも早く、日本IPを活用したNFTを、安心、安全かつ、効果的に展開できる環境を整備できればと考えているので、NFT関連で何か対策をご検討される場合はお気軽にご相談いただければ幸いです。


詳細な内容についてお知りになりたい方はこちらをご覧ください。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/2023nftreport.htm


著者情報

IP FORWARD グループCOO

陸 洋森/Lu Yangsen

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