中国現地法人における従業員の不正行為に対する対処法
中国のゼロコロナ政策により、日本本社による現地法人の監査が難しくなり、現地法人の書面の報告を受けるだけになってしまった企業は少なくありません。また、現地法人の不正行為の類型は、年々変化しており、かかる観点からも、コンプラ体制の見直しと不正調査の実施が重要といえます。本稿では、不正行為が発覚した場合にどのように調査を進めるべきか、調査後の対応はどうすべきかについて解説いたします。
1. 社内不正行為の原因
社内不正行為の原因としては、駐在員と従業員のコミュニケーション不足が挙げられます。コロナ禍で駐在員の渡航が困難となったこと以外にも、従来から言語や文化の違いが障壁となっていた例も多く見られます。
2. 社内不正調査の目的
不正調査をする目的は、事実を究明し、損害の回復を図り、再発防止策を検討することにあります。不正調査は、社内管理上の問題や弱点を発見し、コンプラ制度を整備していくことに繋がります。
3. 社内不正調査の進め方
不正調査は以下の順序で進めていくことが一般的です。
・初動対応(調査チームの結成、調査方針の検討)
・調査の実施(情報収集と証拠収集)
・調査後の対応(報告書の作成と処分の検討)
・再発防止のための社内制度の整備
4. 社内不正調査の留意点
調査対象者へのヒアリングは、調査の中核の一つであるところ、この準備は特に徹底する必要があります。調査対象者から証言を得ることばかり考えてしまい、誘導尋問となることは避けなければなりませんし、他方で、ヒアリングの結果、曖昧な証言しか聴取できなかったとう事態もあってはなりません。
5. 調査後の対応と今後の対応策
調査後は、労働関連法令または社内規則に基づく処分、⺠事訴訟の提起または刑事告発を検討することになります。また、再発防止の観点から、社内コンプラ規程の整備、定期的な社内監査の実施、社内研修の実施を検討することになります。
6. 最後に
社内コンプラ体制の構築は、その重要性は誰もが唱えているところでありますが、具体的にどう構築するのか、どうしたら実効的な体制になるのか、「中身」が重要です。本稿をお読みいただき、「不正行為が起こったらどうする?」を考えていただきましたが、これを機に「不正はどうやったら防げる?」に目を向けていただき、自社のコンプラ規程を今一度見直されてはいかがでしょうか。