「データ越境流動の促進と規範に関する規定」が遂に公布
2023年9月28日に「データ越境流動の規範と促進に関する規定」の意見募集稿が公表され、一定の場合について標準契約等を不要とする条項など、個人情報越境移転手続きの緩和に関する重要な規定が盛り込まれていましたが、募集期限経過後しばらくしても正式に公布されない状況が続いていました。そうした中、2024年3月22日、「データ越境流動の促進と規範に関する規定」が公布され、同日施行されました。本規定は、全14条で構成されていますが、その中から、多くの日系企業にとって特に重要と思われる条文をピックアップし、解説いたします。
第3条 国際貿易、越境運輸、学術提携、越境の生産製造とマーケティング等の活動の中で収集し、生じたデータの越境移転について、個人情報又は重要データを含まない場合には、データ越境移転安全評価の申告、個人情報越境標準契約の締結、個人情報保護認証の通過を要しない。 |
3条、4条、5条では、データ越境移転安全評価の申告、個人情報越境標準契約の締結、個人情報保護認証の通過のいずれも要しない旨を規定しています。
越境EC等の取引に関して個人情報を越境移転する場合や中国現地法人の従業員または顧客の個人情報を日本本社に越境移転する場合などでは、特に5条1号、2号、4号の検討が考えられます。5条1号、2号、4号の検討に際しては、以下の二点に注意を要します。
5条1号は、「契約(越境EC、越境郵送、越境送金、越境決済、越境口座開設、航空券・ホテル予約、ビザ手続、試験サービス等)」と規定し、かっこ書の例示の中に「等」と記載がありますが、個人情報保護法の趣旨からしまして、本号の適用は例示に即して厳格に解釈されるものと思われます。
次に、個人情報に機微個人情報が含まれるか否かも重要となります。5条1号、2号、3号については、個人情報に機微個人情報が含まれる場合も適用されるものと解されますが、5条4号については、機微個人情報が含まれる場合は適用されません。
年間に越境移転する個人情報の数量が10万人以上の日系企業は限定されると思われるため、5条4号によって多くの日系企業はデータ越境移転安全評価の申告、個人情報越境標準契約の締結、個人情報保護認証の通過が不要となるものと考えられますが、機微個人情報を含む場合には、5条1号、2号、3号に該当しない限り、7条や8条により、データ越境移転安全評価の申告、個人情報越境標準契約の締結、個人情報保護認証の通過の要否を確認する必要があります。
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IP FORWARD 法律特許事務所