反不正当競争法改正草案及びパブコメ公告
2022年11月22日付で、国家市場監督管理総局より、反不正当競争法の改正草案と、それに対する意見募集についての発表がありました。
中国の反不正当競争法は、日本の不正競争防止法に相当する法律です。直近では2019年に改正があり、同改正時には、営業秘密侵害についての立証責任転換規定など、主に営業秘密保護に関する保護の強化を図る規定が盛り込まれました。
今回の改正草案では、4条に、「国はデジタル経済の公平な競争ルールを健全化する。事業者は、データやアルゴリズム、技術、資本の優位性、プラットフォームの規則等を利用して、不正競争行為を行ってはならない。」との、一般的な規定が新設されたことに現れているように、ネットワーク、IT関連技術の進展に伴う新たな不正競争行為の規制強化を目的とする規定が目立ちます。
具体的には、商業上の混同行為に関する規定(7条)においては、従前から明記されていたドメイン名の主体部分、ウェブサイトの名称に加えて、ウェブページデザイン、セルフメディア名称(※)、アプリケーション名称又はアイコン等も保護対象として明記されたほか(同条1項3号)、他人の一定の影響力のある商業標識を無断で検索キーワードとして設定し、関連公衆を誤導する行為(同条1項4号)も、規制対象として追加されました。なお、現行法では、損害賠償金額が1~5倍に増額される、いわゆる懲罰的賠償制度が、悪意かつ情状が深刻な営業秘密侵害の場合に限られていたのに対し、改正草案では、懲罰的賠償の適用条件が「本法律の規定に違反し、情状が深刻である場合」となっています。
また、今回の改正草案には、日本の不正競争防止法における、限定提供データの保護関連規定に相当する規定も含まれています(18条)。
草案によると、本条で保護対象とされるのは「商業データ」であり、その要件は、
① 事業者が法に基づき収集したものであること
② 商業的な価値を有すること
③ 相応の技術的管理措置を講じたこと
となっており、ただし、公衆が無償で利用できる情報と同一のデータの取得、利用、開示行為は、本条による規制の対象外とされています(同条2項、3項)。また、規制対象行為としては、例えば、「不正な手段により取得した他の事業者の商業データを開示、譲渡又は使用し、他の事業者が提供する関連製品やサービスを実質的に代替するに足りること」などが規定されています(同条1項)。
その他、今回の改正草案では、技術的手段を利用してユーザの選択に影響を及ぼしたり、他の事業者との取引等を不正に排除する行為を規制する規定が新設されています(15条~17条)。
※ 中国では、当局に正式に登録せずに、オリジナルコンテンツを発信する独立系のアカウントを指して、「セルフメディア」と称することが多い。
出典:https://www.samr.gov.cn/hd/zjdc/202211/t20221121_351812.html