中国のアフターコロナにおける日本ベンチャー企業の商品展開
私は職業柄、お問い合わせに対し「なぜ中国展開をするのか?」と問いかける機会が多い。多くの人は「中国市場は大きい。凄い。」と回答する。
14億人という膨大な人口を抱え、かつ鈍化しつつも経済が依然として成長を続けている中国市場の大きさだけが語られることが多い。しかしながら、そのような観点だけに固執することは危険である。日本と比較して人口が多いから物がたくさん売れるという錯覚に陥りがちだが、現実はそう単純ではない。このような大規模な人口を有する市場こそ、効果的なマーケティング戦略を取り入れる必要がある。
例えば、中国の14億人にどんな商品も同じように受け入れられるわけではない。中国市場の特徴は多様性で、人口が多いだけでなく、経済力や購買に関する価値観も多様である。 偽物や類似品を買って満足する人もいれば、高品質な正規品を購入して品質にこだわる人もいる。また、コスメ市場でも、女性向けだけでなく、男性向けの製品も日本よりも展開されており、その路線の男性網紅(専業インフルエンサー)の知名度も高まってきている。
中国市場においては、経済力や価値観の多様性、販路の多様性を考慮した商品展開が必要である。しかしながら、単に中国の14億人の市場で売れるという点に踊らされて安易に商品展開を行うと、まず販売するための諸手続きで苦戦をし、また期待に反して販売不振となる場合がしばしばある。このような失敗例から、「中国人とのビジネスは難しい。彼らを信用できない」という印象を持つ人も多々いるだろう。
日本の大手企業が展開する、例えばコスメ、粉ミルク、そして紙オムツのような日本でも有名な商品、知名度が高い商品であれば、中国市場でもなんとなく評価されるかもしれない。
しかしながら、中小ベンチャー企業のような日本での知名度が低い良質な商品を展開する場合は、中国市場では認知度も低く、いくら商品が良くても同様の評価が得られるとは限らない。
それでも、中小ベンチャー企業が中国市場で成功する方法はある。
それは資金調達にあくせくすることや、日本市場での実績を再現しようと無理をすることでもない。重要なことは、自社の良質な商品・技術をどれだけ現地の協力者に訴求できるかである。
つまり、中国市場へ進出するためには、中国のマーケッターとの共同事業的なスタンスが求められる。当初は日本で投入している商品の展開が主体にはなるが、発展的に現地に適した日本製へと商品をシフトすることが重要である。それには良質なマーケッターと出会い、企画立案から協力して進め、中国市場に合わせて、商品のカスタマイズや生産の見直しを行うことが必要だ。
ただし、展開が成功するかどうかはセンスが問われる。無理に中国市場に合わせた改変をすることで、商品の個性やブランド力が損なわれる可能性があるため、戦略的な改善が必要だ。重要なのは、中国のマーケッターが保有する販路を最大限に活用し、展開計画を彼らと協力して慎重に進めることである。
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IP FORWARD株式会社