コラム

中国におけるO2O模倣対策の概況〜インターネットを起点とした模倣業者の特定〜

はじめに

 近年、中国における模倣品の流通は、通常の店頭や卸売市場だけではなく、むしろインターネットが中心になってきています。これに伴い、多くの権利者はインターネット上での模倣品調査や削除対策を強化しています。

 しかし、模倣業者によるその行為は悪質性が高く、リンク削除だけでは対応が不十分であることも増えてきています。

 そこで、インターネット上での模倣品調査や削除対策の他に、O2O対策(「オンラインtoオフライン対策」)も主流になってきました。O2O対策とは、インターネット上で模倣品を発見した場合、それを販売する模倣業者の実際の拠点を特定して、その後、同拠点に対して摘発等を行うことです。

 今回のトピックでは、このO2O対策の進め方についてご紹介したいと思います。

【O2O対策の全体イメージ】

 O2O対策において最も重要なのは、インターネット上の模倣業者の実際の経営拠点を見つけ出すことです。他方で、模倣業者の手口の巧妙化等により、ここ数年間その調査は複雑で困難になることが多いのが実情です。

 調査を進める際には、「①ヒアリング」、「②サンプル購入」、「③追跡・監視」、「④公安捜査」等の手段を用いることが多く、具体的には以下のとおりになります。

①    ヒアリング

 チャットや電話を利用して、「大量購入するので面談したい」、「店舗で実物を確認したい」、「すぐに製品が欲しいので取りに行きたい」等のように問い合わせ、業者の実際の拠点住所を聞き出します。実際に販売店や工場を有する業者であった場合は、業者側とこうした商談を行うことも実務上容易なので、拠点住所を割り出すことができる確率は高くなります。
 また、BtoB製品の場合、ヒアリングの成功率が高くなるのも特徴です。

②    サンプル購入

 サンプル購入を契機とする調査方法では、模倣業者からサンプルを購入し、配送伝票やレシートの記載情報を参照して相手の住所や連絡先情報を入手します。入手した情報について検証して、真実である可能性が高い場合は、直接、当該現地住所に調査員を派遣して、詳細調査を実施することになります。

③    追跡・監視

 サンプル購入で情報が得られない、もしくは、その際に入手した情報は虚偽であることも多くあります。その場合、購入したサンプルの返品手続きを行い、返品先の住所や連絡先情報を入手し、そこに調査員を派遣することになります。

 多くの中国ECでは「7日間返品制度」が用いられており、商品を購入してから7日以内であれば、特段理由がなくとも、販売者は原則返品に応じなければなりません。

 なお、返品先住所に調査員を派遣した結果、模倣業者の実際の拠点に辿り着かないことも散見されます。実際に現地へ行ってみたが、当該住所は物流業者の営業所・倉庫であった場合は、物流業者に対する追跡・監視を通じて、模倣業者の拠点を探り出すことになります。

④    公安捜査

 特に厳重に警戒すべき模倣業者については、上記で紹介したような調査手法が通じないことも多くあります。この場合は、重大な権利侵害行為が存在し、模倣業者への刑事責任が追及可能であると判断できる事案については、刑事摘発を実施することを前提に、公安に相談して、公安による捜査を行うことも可能です。

 公安局は、それまでに権利者や調査会社で収集した情報を基に捜査を開始します。それによって、権利者や調査会社では知りえなかった詳細状況、例えば「模倣業者の個人情報」、「模倣業者の住所」、「出品者とその関係者等の組織構成」、「模倣品の販売記録」、「上流・下流の取引ルート」等を明らかにできる可能性があります。

 上記を通じて、模倣業者の拠点を特定することができた場合、最終的には調査員が当該住所を訪問し、主に以下の事項を詳しく調査することによって、模倣業者の実態、模倣品の流通状況、侵害行為の詳細を把握して、その後の摘発等に繋げていくことになります。

・模倣業者の氏名
・模倣業者の住所
・経営者情報
・売上、従業員、面積
・模倣品保管場所、保管数量
・模倣品出荷時期、生産予定
・模倣品流通経路
・輸出入状況
・不正宣伝等の違法行為
・現場写真、パンフレット、名刺

【O2O調査における現場の様子】


 
   


 すべての調査が終わり、摘発条件も整っているならば、模倣業者に対して摘発を行うことになります。摘発の結果、模倣業者の模倣品を没収したり、罰金を科したり、刑事罰を科したりすることもあります。

【O2O対策による摘発現場の様子】



 以上、インターネット上における模倣行為が増え続けている現状では、ネット調査とリンク削除と同時に、O2O模倣対策も連携して行う必要性が高くなってきており、今後の模倣対策の主流になるものと思われます。

 ご関心がある方がいらっしゃいましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

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著者情報

担当:IP FORWARD
模倣対策部

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