中国におけるデューデリジェンスの重要性
弊社の調査によると、現在、中国で市場展開している日本企業は4万社程度であり、日本企業にとって、中国は依然最重要ビジネスパートナーであることは間違いありません。また、経済産業省の統計では、日本企業の現地法人の地域別分布比率の推移について、中国は2012年のピークの33%から減少傾向ではあるが、2019年時点で、依然としてトップの29.7%を占めており、全世界から見ても、日本企業にとって中国市場は魅力的とは言えます。
そんな中、中国進出、現地提携先(パートナー)選定、事業買収等の場面において、事前に調査して情報収集することがほとんどで、弊社でも、中国における信用調査、競合他社調査、デューデリジェンス調査などを多くサポートしております。
特に、2020年以降、コロナウイルスの影響で、中国との取引にリスクを感じている企業様は少なくありません。中には、提携先は実質営業しているか、支払は滞っているか、ちゃんと納品できるか、既存のサプライヤーはどうなっているか、原材料が安定供給可能か等懸念されるポイントが挙げられました。こういった状況を打開して、少しでもビジネス上のリスクを低減し、事業を展開しようとしている今こそ、改めて調査を通じて、相手企業の状況確認をすることをお勧めします。
「中国デューデリジェンス調査」の概要
中国では、企業調査する際に、最も使われている調査は「信用調査」という調査をよく耳にするのでしょう。信用調査は、短期間に情報を入手することで、基本的に机上調査を通じて行い、企業の登記した公開情報と非公開の財務データを提供することが一般的です。企業の運営状況や財務状況を把握するには有効な調査ですが、実質支配者の状況や、取引先の安定性等ビジネス上非常に重要なポイントをカバーできていない欠点があります。これらの「信用調査」でカバーされていない情報を提供するのが、「デューデリジェンス調査」です。
「デューデリジェンス調査」は、机上調査とヒアリング調査の2つ手法を通じて、定量と定性の両面から調査分析します。特に対象企業のサプライヤーや販売先にもヒアリングを実施することで、ビジネスの安定性、代金支払いの遅延、納品の遅延等の情報を提供致します。
「中国デューデリジェンス調査」の一般的項目
中国のデューデリジェンス調査は主に以下の項目によって構成されます。
- 企業概況
- 経営状況
- 内部管理状況
- サプライヤー、販売先情報
- 財務状況
- コンプライアンス関連情報
- 信用度ランク
1つ目は、企業概況です。基本的には、社名、住所、設立時期、資本金、株主等の企業登記情報を纏めたものです。ここの部分は、情報の信憑性にほぼ問題ないものの、情報の見間違いで、後にビジネス展開する際に、誤った相手と契約締結してしまうケースが少なくありません。例えば、本来、A社と契約締結したいはずだが、誤って子会社のA′と契約締結してしまって、自社が不利に陥ったということです。従って、報告書を入手してから、まず、調査企業の詳細情報、特に社名、登記番号、住所、株主等の情報を確認し、自社が調査したい企業であるかどうかを確認しましょう。
2つ目は、経営状況です。中国企業とビジネスする際に、最も気になるのは、相手企業の経営状況です。中国では、登記されているものの、実際営業していないペーパーカンパニーは多く存在しています。経営状況の調査は、対象企業実際の経営状況を調査することで、当該リスクを軽減することができます。また、中国では、節税や、政策優遇のため、登記住所と実際の経営場所と異なるケースも少なくありません。経営状況調査を通じて、実際の生産体制、販売体制等の情報をゲットできます。更に、本調査は対象企業の主要取引先まで調査することで、気になる競合他社との関係も導き出すことも可能です。
2021年から、この欄に「新型コロナウイルスによる影響」が記載されるようになりました。業界状況、地域状況について、影響が大きいか小さいかが記載されます。対象企業の営業場所に該当する地域の状況や、操業停止等の情報を盛り込まれています。
3つ目は、内部管理状況です。基本的には、対象企業内部のキーパーソンに対して、ヒアリング調査を実施し、企業の中期計画を聞き出します。相手企業が安定して経営しているかどうか等の参考材料になります。
4つ目は、サプライヤー、販売先の情報です。相手企業からサプライヤーへの支払に遅延があるか否か、また、下川の販売先に製品発送の遅延があるかないかを確認できます。資金回収に気になる日本企業にとって、相手企業の支払姿勢も重要です。特に財務諸表上では、資金潤沢だが、支払は常に遅くて、滞っている企業もあります。それらの企業と付き合う際に十分気を付けましょう。
5つ目は、財務状況です。基本的には、直近2年間の財務データ(貸借対照表と損益計算書)を提供します。中国ではBSとPLは入手できるが、キャッシュフロー計算書(CF)の入手はできませんので、予め知っておく必要があります。また、中国の財務諸表の計上方法は日本と若干異なる場合があります。中には日本でない項目も存在していますので、不明な所がありましたら、委託先に確認すると良いのでしょう。
6つ目はコンプライアンス関連情報です。訴訟記録、税務処罰、労働違反、高額な対外投資、不祥事報道、抵当権、質権の登記等の情報がこの部分に含まれています。中には、訴訟記録と税務処罰を重点的に確認しておく必要があります。訴訟記録は過去と現在進行している訴訟があるかないかを確認し、今後のビジネスにどのような影響があるかを判断できます。税務処罰は、過去処罰を受けたことがあるかどうかの情報を纏めたものです。中国では、外国企業と取引で、対外送金は厳しく管理監督されています。過去に税務処罰を受けたことは、対外送金遅れるの原因になることもありますので、税務処罰情報も非常に重要な参考材料の一つだと考えれます。
まとめ
中国にてビジネス展開し、中国企業と契約締結する前に、まず企業調査を実施し、相手の業務内容等をきちんと把握する必要があります。特に、中国では新型コロナウイルスの影響で、日中間の往来ができない中で、対象企業を経営実態を把握することが通常よりも重要になります。そこで、本デューデリジェンス調査は様々なビジネス場において役立てればと考えられます。